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――まずは、メンバー2人との出会いから訊かせてもらえますか?
石坪 ベック(※阿部)は小学校から一緒なんですよ。小5ぐらいから仲良くなりましたね。で、通ってた塾も同じだったりして。地元では有名な吉田塾というところがあり、「あそこへ通えば志望校へ行ける!」みたいな。まあ、スパルタでしたけど(笑)。
――ハハハハ(笑)。阿部さんとはコピーバンド時代から一緒にやってるんですよね。
石坪 遊び仲間だったんで、その流れでバンドを組み、最初はL'Arc~en~Cielのコピーをやってました。
――当時の阿部さんはどんな子だったんですか?
石坪 明るい性格で、今と変わらないと思いますよ。すげえ仲良かったし、中学の青春時代を一緒に過ごしてたみたいな。
――高校へ進学してからは、どうなりました?
石坪 そのコピーバンドをちょろちょろやりつつ、高2になって、友達からGOING STEADYの存在を教えてもらい、僕、ベック、トシ(※榎本:2006年 FGMAN脱退)、教えてくれた友達で新しくバンドを組んだんですよ。FGMANの原型ですね、それが。ライヴハウスでもやりたくなり、稲毛K's Dreamに出始めたりもして。その後、受験が近くなって、その友達が抜けたけど、3人で卒業後もバンドは続けたんです。で、千葉LOOKのオーディションに出るころ、智恵と出会いましたね。
――どんな繋がりだったんでしょうか?
石坪 トシにギターを習いに来てた子の友達が智恵だったんですよ。

――結構遠い繋がりでしたね(笑)
石坪 そうですね(笑)。「もう1本、ギターを入れたいね」っていう話をしてたら、「弾き語りやバンドをやってる女の子がいるよ」って聞いて、ライヴを観に来てもらい、「やってみない?」っていう。
――ちなみに、智恵さんの第一印象は?
石坪 ちっちゃくて、シックな服装をしてた記憶がありますね。ハットとかも被ってたんじゃなかったかな~。
――それまでは、繋がりのある人とバンドを組んでたわけじゃないですか。紹介とは言え、知らない人が加入することに抵抗は?
石坪 なかったですね。新しいことをやってみたい時期だったり、「いいじゃん!」みたいな感じでした。
――そのころって、無我夢中でバンドをやっていた感じでした?
石坪 思い返してみれば、周りの言われるがままにやっていたところもあったと思いますよ。で、773Four RECORDSのkiyoshiさんと出会って、ちょっと意識が変わったというか。「リリースできるかもしれない」っていうのが、おぼろげに見えてきたわけです。やっぱり、CDをリリースするというのは、その当時の目標ではありましたからね。
――他者の評価を意識すると、曲作りにも何か変化があったりとか?
石坪 いや、曲作りに関しては、昔も今も変わらないんですよ。想いを純粋に吐き出してるというか。言ってしまえば、好きなことをやってるだけなんですよね。それぞれが好きなフレーズを演奏して、歌いたいメロディーを作ってるという。

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――改めて、石坪さんのルーツ・ミュージックを教えていただけますか?
石坪 まず、最初はL'Arc~en~Cielから入って、兄が好きだった影響でTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTもよく聴いてて。それこそ、初めてライヴへ行ったのもTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTだし。その後、Hi-STANDARDやGreen Dayを知ったり、高校に入ってからは、MONGOL800やGOING STEADY、洋楽だとSlipknotやVISION OF DISORDERあたりを聴いてましたね。
――ジャンルも多岐にわたってますし、柔軟に聴くタイプなんですね。
石坪 自分が音楽をやってるからかもしれないけど、どんな音楽に対してもダサいとは言いたくないんです。何かいいところを探したくなってしまうというか。
――そういったスタンスである為、FGMANではメンバー全員が曲作りをするんでしょうか?
石坪 どうだろう……そこは、直結してないかもしれないけど…「いいモノはいい」っていうのは昔からあって。だから、智恵は最初のころから曲を書いたりもしてるし。ただ、メロディーに対する謎のハードルを持ってはいましたね。
――その謎とは、どういったことですか?
石坪 以前までは、凝ったメロディーというか、「聴いたことがあるようでない、変わったメロディーを表現したい」みたいなこだわりがあったんですよ。「Awakening」なんかは、それが如実に出てる気がしますね。「Tears can change it」とかもそうかな。ちょっとひねくれてるというか。
――あえてのフックを入れるという。
石坪 でも、それを取っ払えるようになって。今回は、「共有しやすい」や「耳に入ってきやすい」というところを軸にしてます。
――物事をフラットに捉えられるようになったといいますか。
石坪 そうですね。だから、曲作りもよりスムーズになりそうだし、他の2人からこれまで以上にアイデアが出てくる気がしてますよ。やっぱり、ひとりでアルバム全部の曲を書くのはたいへんだし(笑)。
――ハハハハ(笑)。今後の阿部さんと智恵さんに求めているモノは何かありますか?
石坪 智恵は、歌をより意識するようになってるんですよ。だから、ギターも歌もより上手くなるはずだし、どんどん意識が高くなっていけばいいなって。
――ヴォーカリストという立ち位置では先輩になりますけど、ライバル的なところもあります?
石坪 まだまだライバルとは思ってないけど……そういう関係になっていきたいですね。ベックに関しては、自分を高めることをやってるからこそ、ヘコまされてるところを見てみたい(笑)。

――なるほど(笑)。では、自分自身に関してはいかがですか?
石坪 もっと歌を唄えるようになりたいですね。僕はギターが弾けないんですけど、それこそ、アコギ1本で唄えるようになりたいと思ってて。最近、アメリカのシンガーソングライターのDVDをメッチャ観てて、憧れるところがあるんです。僕ら、メロディーとか歌ありきのバンドなんで、様になるだろうし、やってみたいなって。そういう中で、手にする経験や知識もあるはずだから、挑戦してみたいですね。
――石坪さんって、意識としてはヴォーカリスト? それとも、ベーシスト?
石坪 今は……ヴォーカリストかもしれませんね。でも、ベースも好きだし。それこそ、GOING STEADY、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、L'Arc~en~Cielが好きだったから、動かすベースが好きなんですよ。そこが根底にあるので、ちゃんと存在感のあるフレーズを弾きたいし……もう、やりたいことは全部やりたいっていう。
――今回の作品の立ち位置について伺いますが、これまで以上にメンバーの個性が絡み合ってるし、ひとつのターニングポイントになるような気がしてまして。
石坪 そうですね。たしかに、曲に対して、みんなが向かい合ってる気がするし。それが形になりましたからね。
――全部を自分色に塗りつぶしたいみたいな感覚はないんですか?
石坪 それは全然ないです。この3人でやれば、ちゃんとFGMANの色になることが今回でよりわかったし。それこそ、智恵がすげえやる気になり、12曲ぐらい曲を書いてきて、全部がよかったら、それでアルバムを作ってもいいと思うぐらい。3人で作り上げたモノがよければ、それでいいっていう。
――改めて考えてみると、3人の好きなところで重なる部分はあれど、向いてるところは意外と違いますよね。
石坪 たしかに、そうですね。やりたいことも結構違うと思うし。なのに、1曲を3人でやろうとすると、同じ方向になるんですよ。
――FGMANとしてすべきことの共通認識があるというか。
石坪 それはあるかも……お互いの成長度合いを端から見つつ、それができるのであればやるみたいな。それぞれの限界値を伸ばして、重なった部分をFGMANとして表現してるんでしょうね。

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――智恵さんは、18歳のときのFGMANへ加入してるんですよね。
智恵 そうでしたね。ただ、本人たちも忘れてるんですけど、最初はゲスト・ヴォーカルみたいな感じだったのが、「ギターを弾けるんなら、やってみない?」、「じゃあ、やってみようかな」みたいな(笑)。
――そうだったんですね(笑)。それまでは、どういった活動をしていたんですか?
智恵 アコギで弾き語りをやったり、キーボードとしてバンドに参加してたこともありましたね。ただ、そのころはバンドっていう概念がなかったというか。だから、バンドに加入するっていうよりも、単純に一緒に音を奏でる人が増えたような感覚だったんですよ。
――弾き語りをやっていたというと、あまりパンクやロックは聴いてなかったとか?
智恵 あまり知らなかったですね。それこそ、街中やテレビで流れてる音楽を聴いてたぐらい。あとは、お兄ちゃんが聴いてたのでLUNA SEAを知り、L'Arc~en~Cielに興味を持ったり。女性で歌うとなると、椎名林檎さんやJUDY AND MARYかな~。
――女性のロックスターに憧れたりとかは?
智恵 林檎さんは、凄く衝撃を受けたというか。弾き語りをやってたときは、若干追ってた部分はあったと思いますね。ただ、はっきりと憧れてたわけでもないというか……楽譜を書くのが楽しくて、小5ぐらいからオリジナルの曲を作ってたから、何かをなぞることを知らなかったんです。曲を作り、それを鳴らす。で、それを何の楽器で奏でようか、みたいな感覚だったし。
――じゃあ、FGMANをやっていく中で、音楽的に広がっていった部分も?
智恵 そうですね。知らなかったモノが多すぎたし。で、自分が目指していく部分というか、ギター・ヴォーカルとしてそうありたいというASPARAGUSの忍さんを知ることもできたという。ただ、今でも広げてる最中だったりするんですよね。

――また、手にしてる楽器がキーボードではなく、ギターだという理由は?
智恵 純粋にギターが好きというのはありますけど……なんだろう、最初はギター・コーラスとしての立ち位置を求められて、それが楽しくて。で、いろんな人と出会い、経験をした結果、もはやギターじゃないと落ち着かない自分がいるし。もう体の一部になってみたいな。
――やっぱり、ギターは楽しいですか?
智恵 うん、楽しいですね。ひいひい言うことも多いですけど(笑)。
――ハハハハ(笑)。3ピース・バンドだし、求められる役割は大きいですからね。
智恵 やっぱり、このバンドでは私しか奏でられない音なので、楽しいし、やり甲斐もあるし。
――ギターに関して、何か智恵さんなりのこだわりというと?
智恵 セブンスコードを使ったりするのが好きですね。ギター1本で弾いたらオシャレな感じなんだけど、このバンドに乗せると違ったテイストになるっていうのが楽しくて。
――では、メンバー2人についてお伺いしますが、昔と比べていかがですか?
智恵 ベックは……太りましたね(笑)。
――ハハハハ(笑)。中身としては、どうですか?
智恵 昔よりも、いろんな人と交流するようになってる気がしますね。変わってないなと思うところは、いざというときに言葉を発すること。フワッとしてて、何も考えてないようだけど、ここぞというときはバシッと決めるんですよ。だから、バンドの中でいちばん冷静なのかなと。
――石坪さんについては?
智恵 不思議なところと真っ直ぐなのは全然変わってないですね。で、その真っ直ぐも、昔は危なさがあったんですけど、支えてくれる人たちが増えたからなのか、ちゃんと周りが見えてるような気がしますね。

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――智恵さんご自身の立ち位置について、目指すようなスタンスはありますか?
智恵 正直、以前は女性っていう枠にハメられるのが嫌だったんです。ギターを弾いて歌いたいだけなのに、女性っていうところをクローズ・アップしなくてもいいのになって。でも、理由はわからないんですけど、それはあまり気にならなくなって。今は、意識をどんどん高めていき、それが音として伝わって、ずっと誰かの耳に残ってるような存在でありたいなと思ってますね。
――それは、ギタリストとして? それとも、ヴォーカリスト?
智恵 バンドとしての存在感もそうだし、私個人としてはどちらもですね。ギタリストでもありたいし、ヴォーカリストとでもありたい。やっぱり、ただギターを持って歌ってるわけじゃなく、どちらの側面から観ても成り立ってるような人になりたいです。
――では、改めて今回の作品を振り返ってみてください。
智恵 より3人が固まって、よりお互い向き合った上で、さらにお客さんとも向き合おうとしてる作品なのかなって。
――どうして、より向き合えたなんでしょうか?
智恵 バンドとしてのモードが変わったというか。無駄なカドが取れたんですよ。それによって、お互いの意見を今まで以上に受け入れるようになったし。
――何かキッカケがあったんですか?
智恵 特別な何かがあったというよりも、ちょっとしたキッカケで私は受け入れてみて、実際にやってみたら、それが自分からは出てこないモノだったりしたし。そういう積み重ねの結果でしたね。やっぱり、他者からの意見やアドバイスって、自分からはなかなか出てこないモノだったりするじゃないですか。で、それぞれの個性が何層にも重なって、曲になるという。
――また、智恵さんの歌も凄く進化したと思うんですよ。ヴォーカリストとしての存在感が増したというか。
智恵 やっぱり、歌に関しては躓くことの方が多かったんです。弾き語りのときと違って、英語だし、ハモらないといけないし、ハーモニーも奏でるし。だから、伝える・伝えない以前に、ヴォーカリストとしての自分に疑問を持ったり、不安になってしまうこともあり。それを通り抜けて、今は歌いたいことを歌ってるからかもしれませんね。

――いい意味で、開き直ってるといいますか。
智恵 このバンドに入るのが後からだったんで、ずっと追ってるイメージがあって。ちょっとでも背伸びしないと届かないというか。でも、それを止めたんです。背伸びすればするほど、カッコ悪い自分に気づいたし。
――今後に関しては、何か夢はありますか?
智恵 え~と……フィンランドへオーロラを観に行きたいです(笑)。
――なるほど(笑)。バンドについてだと?
智恵 もっと海外へ行きたいですね。昨年は台湾でライヴをやりましたけど、同じレーベルのYELLOW MONSTERSから「智恵は韓国で人気があるよ」って言われたから韓国にも行ってみたいし。
――昨年末は、シンガポールからFGMANのライヴを観に来た人たちがいましたよね。
智恵 そうでしたね。ホントに嬉しかったです。それこそ、Twitterだとシンガポールだけじゃなくて、いろんな国の人が話しかけてくれるんですよ。待ってる人がいる限り、どこへでも行きたいから。あとは、50歳を過ぎてもこのメンバーでバンドをやっていたいですね。それでこそ、本物なのかなって思うし。
――50歳っていうのが、ひとつの区切りだと。
智恵 っていうわけでもないんですけど、そこまでいったら「まだやってるの!? もう止めときなよ!」って言われるじゃないですか(笑)。
――ハハハハ(笑)。また、高橋智恵というミュージシャンとして、やってみたいことはあります?
智恵 今すぐというわけじゃなくて、それこそ10年後とか、他のミュージシャンやアニメーションに曲を提供してみたいなという気持ちはあります。その為には、ミュージシャンとしても人間としても、これまで以上に知識やスキルをもっと身につけなきゃダメでしょうけどね。

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――阿部さんと石坪さんは小学校からの付き合いなんですよね。
阿部 ですね。ボッチ(石坪)は昔からああいう感じで、マイペースだし、勉強もできるタイプ。塾も一緒だったんですよ。
――あっ、伝説の吉田塾ですね(笑)。
阿部 そうっす(笑)。もう超スパルタで、四街道でオレらの年代だったらみんな知ってるんじゃないかな~。それこそ、智恵も通ってたみたいですからね。
――では、阿部さんのルーツ・ミュージックを訊かせてもらえますか?
阿部 最初、L'Arc~en~Cielから入って、Hi-STANDARDとかメロディックを聴くようになり、オレはそっちを掘り下げていった感じですね。
――バンドをやり始めたころ、特に聴いてたのは?
阿部 やっぱり、外せないのはHi-STANDARD。あと、始まりのキッカケになったGOING STEADYもそうだし。あとは何を聴いてたかな……高校のときは、洋楽が多かった。それこそ、Fat Wreck ChorsやEpitaphとか。Hi-STANDARDは聴いてましたけど、一般的な邦楽はダサいみたいなのがあって(笑)。
――ありがちですよね、そういうの(笑)。
阿部 ですよね(笑)。それが、バンドをやっていくようになって、だんだんなくなっていくという。いろんなモノから吸収したい気持ちが出てきたんですよ。
――それって、個人的に聴くようになったんですか? それとも、バンドに還元できるから?
阿部 まずは、自分の為ではありますよね。もちろん、技術が上がり、バンドへ還元できればいいなっていう気持ちはありますけど。

――――昔だったら聴いてないだろうなと思うアーティストを具体的に挙げるとするならば?
阿部 チャットモンチーはそうかな。まず、ライヴを観て「すげえな」と思ったんですよ。広い会場だったけど、伝わってくるモノがあったし。あとは、clammbon。昔の感覚のままだったら、聴いてないでしょうね。
――ちなみに、好きなドラマーというと?
阿部 一瀬さん(ASPARAGUS)、柏倉さん(toe)、恒岡さん(Hi-STANDARD/CUBISMO GRAFICO FIVE)は、やっぱり好きですよね。外国人だったら、ブルックス・ワッカーマン(Bad Religion)。プレイを観てもらったら、オレが好きな理由がわかると思います(笑)。
――ロックやパンクのドラマーが好きなんですね。
阿部 結局、そこはいちばん好きなところなんですよ。根幹だし、今でも当然のように聴くし。そこがありつつ、幅が広がったような感じですね。
――そういった広がりって、他の2人にも感じます?
阿部 ボッチにいたっては、顕著です。そのときによって、自分の中の流行りがガンガン変わっていくタイプだから、曲としてもそれが表れてるし。本人は意識してないだろうけど、「あのへんを刺激として受け取ってるんだろうな」っていうのがわかりますね。逆に、智恵はブレてない。いろんな音楽を聴きつつも、自分の中でコレっていうのがあるんでしょうね。
――石坪さんが新しいニュアンスを持ち込んだり、阿部さんが広がったりしながら、ブレない智恵さんがいるというバランスの中で、FGMANのサウンドが方向転換していかないのが面白いなと思うんですよ。
阿部 あ~、言われてみればそうですね。でも、そんなに深く考えてないというか……意識して変えるつもりもないし。かと言って、変わっていくことを拒んでるつもりもないんですけど。

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――例えば、今回の作品では阿部さんの楽曲が入ってきたりしてて。曲を作る中心人物が担う割合が変わっても、いい軌跡を描けてるじゃないですか。
阿部 この3人でやると、どんな曲でもFGMANになっちゃうんですよ。実際、作ってる最中には「どうなんだろう?」っていうときもあったりするんですけど。
――それこそ、阿部さんがバンドへ持ち込んだ「Independence」とかですよね。
阿部 ですね。でも、最終的には全然大丈夫なんですよ。ってことは、何をやっても平気だっていう話になるし。考えてみれば、凄いことですよね。軽く聞こえるかもしれないけど、ラッキーなのかなって思うぐらい。
――バンド内のバランスって、変わってきてます?
阿部 いや、あんまり変わってないですね。ただ、曲作りに関しては、みんながやるようにはなったし、みんながそれぞれに介入するようにはなったかな。そういった面では、バランスが均等になってきたところはあると思います。
――では、個人にクローズ・アップして、智恵さんに変化があったりは?
阿部 責任感が増したからなのか、いろんなことに対して積極的になってきたところがあるかなと。昔なんか、「いや、私なんか…」みたいな感じがあって。結局、バンドに後から入ったから仕方ないかなと思うこともあったけど、今は、そういうニュアンスを感じないですからね。
――石坪さんに関しては?
阿部 考え方が柔らかくなってきたように感じます。結構、物事や人に対して好き嫌いがハッキリしてたのが、まずは受け入れてから判断するようになってる気がするし。
――そういったことが、ブレに繋がる怖さはあります?
阿部 それはないですね。もし、何かがブレそうになったら、お互いに言うだろうし。
――メンバーで言い合いになることは
阿部 ありますよ、やっぱり。そこは男女関係なく、思ったことを言い合えなければ、やってる意味がないし。考えてみると……3人で何かを言い合うっていうより、2人が言い合うことが多いかな。で、もう1人が冷静に聞いて、間に入るみたいな。
――改めてですが、今回の作品の感想を教えてもらえますか?
阿部 すげえいいと思いますね。今まで作った作品を比べて、当たり前だろうけど、いちばんだと感じてるし。完成したとき、3人が3人とも「いいね!」って思ったんですけど、それって初めてだったかもしれない。

――その確信の理由とは?
阿部 まずは、単純に1曲1曲が際立ってるということもありますよね。個人的なところだと、初めてバンドへ曲を提供して、みんなで作り上げたという新しさもあって、それは今までとは違った充実感だったりもしますし。最初は、2人とも戸惑ってましたからね。それが、実際に取り組んでみたら「いい!」っていうところに辿り着いたという。
――前回の作品では、阿部さんがメインでヴォーカルを務める箇所もありましたけど、そういったことに関しては?
阿部 今回はあんまりやってないんですけど、今後はもっとやっていこうかなって思うところもあって。やっぱり、できることはふんだんにやった方がいいだろうなって。それが持ち味だったりするじゃないですか。決めつけてやるよりも、枠を広げた上で、そこから吟味すればいいだけだし。
――これからの目標は何かありますか?
阿部 バンドとしては、フェスにも出てみたいし、もっと上を目指したいですね。今とは違った景色も観てみたいから。個人的には、それこそ、ドラムで飯を食えるぐらいのプレイヤーになりたいです。尊敬するドラマーのように、そこへ名を連ねたいし。
――そうなったら、バンドを知ってもらう入り口が増えることにもなりますよね。その為に、更に必要なことは?
阿部 まあ、ゆっくりな曲もちゃんとやれるようになることですよね。パワー押しだけじゃないプレイっていう。
――今回、これまでとは違ったアプローチというか、削ぎ落としたフレーズもありましたよね。
阿部 ちょいちょいチャレンジはしてるんですけど、もっと押したり引いたりっていう駆け引きができるようになりたいなと。例えば、今回のツアーはワンマンが多いじゃないですか。そういった長い時間のライヴになればなるほど、必要なことだと思うし。結局、その肝ってドラムだと思うんですよ。いい流れや雰囲気を作るのはオレの仕事だから、もっともっと向上していきたいんですよね。

「BLINKS」全曲解説 text by ヤコウリュウジ

01. Walk together
穏やかな調べから一気に加速するという、彼ららしい始まりの告げ方をする1曲目。駈け出してからの切れ味は素晴らしい。石坪がヴォーカルの中心を担いながらも、智恵のコーラスとヴォーカルが時折加わることによって、より仕上がりを膨よかにしている。また、「共有」や「共感」が軸になっている今作を端的に表している「I think it's great if we share it together」というリリックにも注目したい。

02. Arrow
智恵が「昔の自分らの想いを今の自分らで表現したら、こんな感じになるような初期感がある」と語る2曲目。鼓動を逸らせるビート、リッチな風合いを持つメロディー、3人の声の織り成し方が見事にマッチし、まさしく正統派な風合いを持っている。歌詞が耳にすんなりと飛び込んでくる為、思わず口ずさみたくなるところもいい。フロアが熱気に包まれる様が容易に想像できる仕上がり。

03. By your hands
伸びやかで芳醇なメロディーワークが琴線を触れまくる3曲目。深遠な石坪のヴォーカルときらびやかな風合いに誰しもが酔いしれることだろう。妙に気取った感じがなく、すんなりと受け止めることができる柔和さが嬉しい。とは言っても、グニャグニャな柔らかさではなく、しっかり芯となる部分が存在しているのがFGMANらしいところ。そのしなり具合が極めて至妙。

04. Milestone
石坪と智恵という2人のヴォーカルが奏でる美しいハーモニーが決めるスタートダッシュもちろん、疾走感抜群のビートと威光を放つ奥深いメロディーが渾然一体となり、これぞFGMANとでも言うべき4曲目。リリックとしても、「We go on and move ahead to try」といった意思表明のような言葉が散りばめられており、ブレずに己の道を走り続けている彼らそのものだ。

05. Independence
曲作りの合宿中、阿部が以前から温めていたフレーズを発展させ、一気に完成させたという5曲目。メロディックの極みというべきか、阿部の根幹がにじみ出た、横殴りの雨のような力強さがたまらない。強烈な推進力はこれまでも持ち得ていたが、そこを思いっきり研ぎ澄ました感があり、FGMANの新たな一面といえるだろう。中盤に登場する、智恵の速弾きはライヴでも要注目。

06. Left behind
勇壮な雰囲気はありながらも、どこかしら物悲しいメロディーに彩られた6曲目。石坪が「なかなか形が定まらず、ボツにすることも考えた」というほど思案を重ねたようだが、エッジの立ったサウンド感、らしさ溢れる疾駆さ加減や押し寄せる迫力があり、鮮烈なインパクトを残すに違いない。ギリギリまで攻めた結果であろう、密度の高さにも唸ってしまった。

07. Cosmos
そのタイトルが物語るように、多大なスケール感に吸い寄せられる7曲目。ゆったりと大らかに石坪が歌い上げる世界観は、まさに広大。語りかけるように歌い、聴く者の心をすっぽりと柔らかなベールで包み込んでくれるかのようだ。今作を織り成す「共有」や「共感」といったキーワードとリンクする、誰かを思いやり、手を差し伸べるというメッセージがどこまでも優しい。

08. Rivals
鮮烈なギターで始まり、小気味よく展開していく8曲目。惹かれるのは、なんといっても智恵のヴォーカルだ。螺旋を描くように飛び込んでくる軽快な声がいいテンションで放たれてることによって、グイグイと胸へと迫ってくる。余計な装飾などなく、その洗練された素朴とでも言いたくなるサウンドは、とてつもない中毒性を持っており、速やかに魅了されてしまうはず。

09. Stop keeping things as you are
すべてを突破していく瞬発力が痛快な9曲目。阿部の「王道とライヴを意識した」と言うように、一気に迫り来る流れは絶妙だ。そして、そこから一転、サビのビッグ・コーラスが生み出す開放感。そのコントラストが興奮を倍増されてくれる。そして、「Don't keep things the same as they are now」というフレーズに代表されるように、アジテーションと錯覚してしまう刺激的なリリックもいい。

10. Same sky, same ground
スタジオの明かりを消し、マイクではなく、その向こうへ届けるべく智恵が歌ったという10曲目。特筆すべきは、ナチュラルに歌い上げる智恵の歌声だろう。郷愁の念が漂っているような温かみがあり、スッと身を委ねたくなる優しさに満ち溢れている。優美なテンポ感も相まって、こめられた澄んだ想いに同化する喜び。等身大な歌だからこそ描かれる景色が美しい。

11. Lifework
「全部をそぎ落として、あえてのフレーズでやってみた」と阿部が語る通り、穏やかでシンプルなリズムが新鮮さを醸し出す11曲目。言わば、FGMANとして新たな挑戦となっている。石坪が歌い上げるグッド・メロディーは、凝縮された深みがあり、あっという間に体中へ浸透するに違いない。また、絶妙なアクセントとなるギターソロもいいコントラストを描き、印象深い存在感がある。

12. Sunflower
軽妙な智恵のヴォーカルが心地よく、ポップなリズムに心が弾む12曲目。シンプルにメロディーと歌を活かした結果、生み出されたのは何度でも反芻したくなるようなコク。しかも、作品を締め括るというよりも、また新たな始まりを告げるような爽快さがあり、躊躇していた一歩目を踏み出す勇気をくれるようなエネルギーがある。慈愛に満ちたニュアンスが本当にたまらない。